広告モデル再考

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背理の病が、そこらじゅうに蔓延している。これに憤慨していても何も始まらないから、立ち止まらず前に進むのであります。

それにしてもウェブにおける、コンテンツとアプリケーションの区別すらつかない人間が多すぎる。もちろんこれに憤慨しても、始まらないから、以下繰り返すのであります。

 その新手は、検索エンジンとの連携で実現する。もともと新聞サイトには検索エンジンからのトラフィックが多い。アクセスの30%以上を検索エンジンに依存している新聞サイトは珍しくない。だが、検索エンジン経由でアクセスしたユーザーの多くは、目的のニュース本文を閲覧するだけで、広告に一瞥だにせず新聞サイトを去っていくのではなかろうか。そうなる理由は明確である。ニュース本文ページが、検索エンジン経由でアクセスしたユーザー向けに、特別のレイアウトや広告掲載を実施していなかったからだ。

 そこで、通常のニュース本文ページとは別に、検索エンジン経由で飛んできたユーザー向けのページを用意すれば、ユーザーが広告を閲覧しクリックする頻度が増えるということだ。実例で見てみよう。
新聞サイトのマネタイジングの新手、広告売上が急増するかも

要するに、検索エンジンでやっていることを、一般のウェブサイトでもやろうってことであります。

なるほど、KAIのウェブサイトにやってくる検索キーワードは、この1ヶ月だけで1544種類。もちろんほとんどが似ているから、実質の内容の種類はこの数分の1ではありますが、このキーワードに反応する広告を出せば、それなりの効果が見込めるのは間違いないのであります。

しかし、新聞サイトとなるとそうはいかないのであります。

例えば今回の「氷河特急」で検索して、事故の記事の画面に、「氷河特急の旅」の広告がデカデカと出るのはいかにもまずい。かと言って、新聞サイトへの検索エンジン経由の訪問者の大半は、恐らく事件や事故のニュース目当てだから、こういった広告が表示できないとなるとスポンサーは限られてくる。

自動車事故に関連する記事に、車の広告が向かないのも、同じ問題なのであります。

すなわち、検索エンジンでやっていることは、実は新聞サイトを含めて大半の情報系ウェブサイトでは、そのままでは通用しないことに気づく必要があるのであります。

その訳を説明する前に、この検索エンジンは、GoogleのAdSenseと何が違うのか。直接キーワードに反応するかどうかの違いはあるにせよ、本質はまったく同じであります。むしろAdSenseの方が、広告主にとってカバーする読者の範囲が大きくなるメリットがあるのであります。

このあたり、まったくリサーチせずに申し上げるのもなんですが、大手の新聞サイトはこのAdSenseを採用することはなかった。もちろんGoogleに広告のイニシアティブがあるからですが、AdSenseの「考え方」自体も、彼らにとって思いもつかないものであったに違いありません。

それは、Gyaoの失敗と同じ轍を踏み続ける「広告局」の存在にあるのであります。彼らにとって、お客様とは「広告主」。「読者」ではないのであります。

この「大きな壁」を超えたのかもしれないのが、この記事。

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いままでの、「広告主」と言うお客様に「広告枠」と言う商品を売る「機能単価モデル」から、「読者」に直接「情報」と言う商品を売る「情報単価モデル」への転換ができるかどうか、パラダイム転換レベルの問題なのであります。

たとえこれができたとして、いままでの広告主の広告をそのまま「検索エンジン」の広告に持って来れないのは、冒頭の「氷河特急の旅」の例の通りであります。

おまけに、「情報単価モデル」で先行するYAHOO!やFacebookといかに差別化していくのか。

この結論を先に言ってしまえば、これは「新聞広告」のあり方を問われているのではなく、「新聞報道」そのもののあり方が今までどおりでは通用しないと言われているのであり、「調査報道」への質的転換を強く示唆されていると言うことであります。

このへんの詳しい理路はまたの機会にご説明するとして、これもまた「コミュニケーションのオープン化」がもたらす必然の帰結なのであります。 KAI