北朝鮮崩壊のシナリオ(11)

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これぞ、外交。

ぜひとも日本の外交の専門家のみなさんには、まさに外交交渉とはかくあるべしを歴史的、同時代的、体験的に、学習していただければと、KAIは思うのであります。

結論を申しあげますならば、外交交渉においては、交渉相手には出せる手札をすべて出させることが肝要であります。

そして、最後の最後、一旦交渉中止を通告。これしかないのであります。

この外交交渉術の理論的ご説明は、後述するといたしまして、まずは、トランプによる「最後の最後、一旦交渉中止を通告」がこちらであります。

 トランプ米大統領は24日、自身のツイッターで、ポンペオ米国務長官が来週に予定していた訪朝を中止するよう、同氏に指示したことを明らかにした。トランプ氏は理由について、「現時点では、朝鮮半島の非核化に関して重要な進展が見られないからだ」と不満を表明した。ポンペオ氏は23日に訪朝を発表したばかりで、突然の取り消しは極めて異例といえる。

 米政府関係者によると、トランプ氏はポンペオ氏が訪朝しても、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と面会する見通しが立っていないことから中止を決断したとみられる。トランプ氏は、米朝交渉の停滞を指摘する報道に対して「フェイクニュースだ」と反発し、交渉は順調に進んでいると強調してきた。今回の中止指示は、そのトランプ氏自身が「(非核化が)進展していない」と認め、不満を初めて公に示したものだ。

 トランプ氏はツイッターで、北朝鮮問題と中国との貿易問題の関係性にも言及。「米国が貿易問題で中国に強硬な姿勢を示しているため、中国は(北朝鮮の)非核化のプロセスを支援しないだろう」と指摘。ポンペオ氏の訪朝は「貿易問題が解決した後が極めて可能性が高い」と記した。

 ただ、トランプ氏は、北朝鮮との交渉を取りやめる意向までは示していない。「当面の間は金委員長に対し、敬意の気持ちを込めてよろしくと伝えたい。私は彼とすぐに会うことを楽しみにしている!」ともツイートし、正恩氏との再会談に改めて意欲を示した。
ポンペオ氏の訪朝中止を指示 トランプ大統領がツイート、ワシントン=園田耕司、2018年8月25日08時27分

そうです、トランプ対金正恩くん。二人の米朝首脳会談のその後の交渉過程でありますが、実はトランプは、金正恩くんに言いたいことを言わせるだけ言わせていたのであります。

まずその一がこちら。

アメリカのポンペイオ国務長官が非核化をめぐる北朝鮮との協議で一定の進展があったという認識を示したのに対し、北朝鮮外務省は一方的に非核化を迫られたとして「アメリカ側の態度と立場は遺憾なこと極まりない」と批判し、米朝間で意見の対立も起きていることをうかがわせました。

アメリカのポンペイオ国務長官は7日までの2日間、北朝鮮を訪れてキム・ヨンチョル朝鮮労働党副委員長と非核化をめぐって協議しました。

ポンペイオ長官は記者団に対し、核兵器を含む大量破壊兵器の申告と非核化の進め方に多くの時間を割いたとしたうえで、「あらゆる協議事項で前進があったと思う」と述べ、一定の進展があったという認識を示しました。

しかし、北朝鮮外務省の報道官は7日夜、談話を発表し、今回の協議について、「アメリカ側の態度と立場は実に遺憾極まりない」と批判しました。

その理由について、声明は「アメリカ側は、CVID=完全で検証可能、かつ、不可逆的な非核化や、検証など、強盗のような要求ばかりを持ち出した」として、一方的に非核化を迫られたと不満を示しています。

そして、北朝鮮が望む朝鮮戦争の終戦宣言はアメリカが条件をつけて先送りしようという立場をとったと主張し、「われわれの非核化の意思が揺れかねない、危険な局面に直面した」として、米朝間で意見の対立も起きていることをうかがわせました。

ただ声明は「われわれはトランプ大統領に対する信頼を保っている」とも付け加えていて、北朝鮮としては、アメリカを揺さぶって協議の主導権を握ろうという狙いもありそうです。

ポンペイオ長官は8日、都内で河野外務大臣と韓国のカン・ギョンファ外相に今回の協議内容を説明したあと、記者会見を開く予定で、北朝鮮の姿勢をどう評価するのか注目されます。
非核化協議 北朝鮮「米側は強盗のような要求ばかり」、2018年7月8日 6時36分

その2となりますのが、こちらであります。
【ソウル聯合ニュース】河野太郎外相が国際原子力機関(IAEA)に対し、北朝鮮の非核化でIAEAが査察に入る場合、費用負担する用意があると伝達したことについて、北朝鮮の朝鮮中央通信は18日に論評を出し、「日本は過去を精算する勇気を持ったほうが良い」と皮肉った。

朝鮮中央通信は日本に対し、過去を精算する勇気を持ったほうが良いと皮肉った=(聯合ニュースTV)
朝鮮中央通信は日本に対し、過去を精算する勇気を持ったほうが良いと皮肉った=(聯合ニュースTV)
 また「金で万事を解決できると考える日本の低劣な考え方は昔も今も変わりない」とし、「費用負担の用意などの発言は朝鮮人民の怒りを買うだけだ」と非難。その上で「過去の朝鮮に対する植民地支配や、わが人民の前で犯した反倫理的な罪悪に対し、誠実に謝罪して正しく清算すること、これが日本のするべきこと」と強調した。 

 河野外相は5日、オーストリア・ウィーンを訪問し、IAEAの天野之弥事務局長と会談し、日本政府がIAEAに拠出した3億5000万円の基金を活用し、北朝鮮非核化の査察費用に充てるなど、同問題に積極的に寄与する意向を伝えた。

 日本は北朝鮮との首脳会談開催の意思を示すなどしているが、北朝鮮は各種のメディアを通じて対北朝鮮圧力の緩和や、過去の清算などの必要性を強調し、日本に対する攻勢を強めている。
北朝鮮「金で解決できると思うな」 日本の核査察費用負担発言に反発、2018/07/18 19:11

さらに、その3であります。
北朝鮮のリ・ヨンホ外相は、シンガポールで開かれたARF=ASEAN地域フォーラムで演説し、「アメリカが行動を示さないかぎり、私たちだけが先に動くことは絶対にない」として、北朝鮮が求める朝鮮戦争の終戦宣言などに向けた進展がなければ、一方的な非核化には応じられないという姿勢を強調しました。

北朝鮮のリ・ヨンホ外相は、4日、ARFで行った演説で、朝鮮半島の非核化などを盛り込んだ米朝首脳会談の共同声明について「責任と誠意を持って履行していく私たちの決心と立場は、確固として不動のものだ」と述べました。

そのうえで、「核実験と弾道ミサイルの発射実験を中止し、核実験場の閉鎖など、主導的に善意の措置を取った」として、非核化に向けた取り組みをアピールしました。

また、リ外相は、「アメリカではむしろ、わが国に対する制裁を維持しなければならないという声がさらに高まっていて、朝鮮半島に平和をもたらす最初の措置である朝鮮戦争の終戦宣言でも、後退する態度を見せている」と述べ、アメリカを非難しました。

そして、「アメリカが行動を示さないかぎり、私たちだけが先に動くことは絶対にない。段階的かつ同時に行動し、信頼を着実に築くことが最も早く確実な道だ」として、北朝鮮が求める朝鮮戦争の終戦宣言や経済制裁の緩和に向けた進展がなければ、一方的な非核化には応じられないという姿勢を強調しました。
北朝鮮外相 「一方的な非核化には応じられない」、2018年8月4日 20時36分

そして、その4がこちらであります。
非核化交渉の現状、専門家が分析

ワシントン(CNN) 北朝鮮の非核化をめぐる交渉で、米国が再三にわたり北朝鮮側に提案を伝えているものの、いずれも拒否されていることが11日までに分かった。複数の外交筋が明らかにした。

外交筋によれば、米国側は「完全に検証された非核化という終着点」に至る道筋について具体的な提案を行ってきた。だが、北朝鮮側は「強盗的」だとして、こうした提案をすべて拒否したという。

交渉の行き詰まりを受け、激動の経過をたどってきたトランプ政権の対北朝鮮外交は地に足の付いたものとなり、以前の政権も苦戦した北朝鮮政府との厳しい交渉が始まっている。

外交上のすれ違いの背景には、6月の米朝首脳会談で発表された約束が曖昧(あいまい)だったことがある。首脳会談後に公表された短い文書では、時間的な枠組みや具体的な約束、各段階で達成すべき目標について何も言及しておらず、双方が好きなように解釈する余地が生まれた。

米国側は完全かつ検証可能な非核化を求めており、これが実現するまでは制裁を維持する方針。一方、北朝鮮側はさらなる措置を取る前に、制裁解除や平和協定締結を要求するとしている。

北朝鮮政権はミサイル実験の停止や米兵遺骨の返還などに触れ、すでに歩み寄りの姿勢を示したと主張。9日には、一部の米政府高官が首脳会談の精神を尊重していないとする強い調子の声明を発表した。
北朝鮮、米国の提案全て拒否 非核化交渉進まず、2018.08.11 Sat posted at 11:42 JST

特にこの記事の中で重要なテキストがこちらであります。

北朝鮮政権はミサイル実験の停止や米兵遺骨の返還などに触れ、すでに歩み寄りの姿勢を示したと主張

金正恩くん、トランプと無条件の核放棄を約束したにもかかわらず、この場に至ってもなお条件提示を繰り返すのであります。

しかし、トランプは、過去の米朝交渉を研究し尽くしているのであります。

研究し尽くしたが故の、トランプの、ポンペオ訪朝中止指示であったと言えるのであります。

すなわち、外交交渉におきましては、そのテーブルにつくかどうかこそ最も重要となるのであります(交渉と安全保障)。

この意味において、金正恩くん、交渉のテーブルから外れることもできないし、外れるわけにはいかないのであります。

もしこのテーブルから、金正恩くん、外れる選択をするならば、それはすなわち北朝鮮の敗北であり、金王朝の終焉を意味することになるのであります。

よって、バトンは北朝鮮にあることになったのであります。

非核化の期限であります、来年4月。

トランプにとって、この期限を迎えることに何の問題もないのであります。

それは単に軍事侵攻の指示を出すだけだからであります。

対する金正恩くん、おしっこちびりまくりなのであります。

再度の米朝首脳会談を懇願して、さて何をトランプにお願いするのでありましょうか?

もちろん、再度の文書の交換もないのであります。

金正恩くん、とぼとぼと会談場を去っていく姿だけが、KAIには見えるのであります。 KAI