ゴーン問題に見る平成最後の年末について

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みなさん、この年末は、私たちが元号最後の年末であることを事前に知る、日本の歴史上初めての年末になるのであります。

そして除夜の鐘が、ゴーン、ゴーン、ゴーンとなるがごとく、ゴーン問題で今年は終わる(ゴーンgoneな)のであります。

さて、この問題の本質は、みなさんご承知の通り、ルノーによる日産の経営統合を阻止することにあるのであります。

ところがであります、世間は今回の問題を日本の司法制度問題であると報じる外国メディアに、まったくもって単純に同調するのであります。

欧米メディア 日本の刑事手続き批判
日産自動車のゴーン前会長が逮捕された事件をめぐっては、欧米のメディアを中心に勾留期間や取り調べの状況など日本の刑事手続きを批判する論調が高まっています。

こうした背景には、日本と欧米との刑事手続きの違いがあるとみられています。

【日本の刑事手続き】
日本では容疑者の逮捕には、原則として裁判所の令状が必要で、検察官が容疑者を逮捕すると48時間以内に裁判所に勾留を請求し、認められれば起訴までに最大で20日間、勾留を続けることができます。

そして再逮捕すれば48時間に加えて、さらに20日間、勾留することも可能です。

起訴したあと、保釈請求が出されても、否認を続けている場合には裁判所が逃亡や証拠隠滅などのおそれがあると判断して、請求が却下され、勾留が長引くケースが多くなっています。

【フランスの刑事手続き】
一方、フランスでは、起訴するかどうかの判断を検察官ではなく裁判所の「予審判事」が担うのが特徴です。

捜査の初期段階には日本の「逮捕」に近い「ガルダビュ」と呼ばれる制度があり、裁判所の令状なしに容疑者の身柄を拘束することができますが、検察官は身柄の拘束後、原則24時間、テロの場合でも最長6日間で予審の開始を請求をする必要があります。

その後、予審判事が指揮して容疑者の取り調べや家宅捜索、通信傍受などの捜査を続け、起訴するかどうかを判断しますが、予審では原則1年以内、最長4年8か月、身柄の拘束が認められています。

専門家によりますと、今回ゴーン前会長の逮捕容疑となった日本の金融商品取引法違反にあたる容疑の場合、フランスの予審では原則4か月以内の身柄の拘束が認められるということです。

【取り調べの違い】
また、日本とフランスでは、取り調べのルールも異なります。
日本では勾留中の取り調べに弁護士が立ち会うことは、一切認められていません。

しかし、フランスでは「ガルダビュ」と「予審」のいずれの段階でも、弁護士の立ち会いが認められています。
専門家「欧米には誤解も 批判に耳傾けるべき点も」
フランスの刑事司法に詳しい神奈川大学の白取祐司教授は、欧米のメディアがゴーン前会長の勾留期間の長さを批判していることについて「フランスの一部のメディアは、日本の逮捕に当たる『ガルダビュ』という手続きと、起訴前の『勾留』を比べて20日間の勾留はテロリストより長いなどと報じている。しかしフランスでは『ガルダビュ』のあと、起訴するかどうかを判断するために『予審判事』が容疑者の身柄を数年間拘束するケースもある。起訴前の日本の勾留がフランスと比べて長すぎるとは言えない」と指摘しています。

一方、取り調べの状況や、拘置所の環境への批判については、「取り調べへの弁護士の立ち会いは、フランス、アメリカ、イギリスなどの欧米だけではなく、韓国などアジアでも認められているケースが多く、批判を受けてもしかたがないと考えている。日本の拘置所は清潔で秩序が保たれている一方で、原則として日中は横になることも許されないなど、行動が厳しく制限されている。欧米の人から見ると驚くような状況だと思う」と述べました。

そのうえで白取教授は「一連の批判には、誤解に基づくものもあるが、グローバル化が進み、多くの外国人が日本を訪れる中で、人権を保障する観点から日本の刑事司法の手続きが海外からどのように見えるのか、意識する必要がある。批判にも耳を傾け改善すべき点は見直す必要がある」と指摘しています。
専門家「背景に捜査文化の違い」
比較刑事法が専門で一橋大学大学院の王雲海教授は、海外メディアが日本の捜査を批判する背景には、経済事件の捜査について、日本と欧米で根本的な考え方の違いがあると指摘しています。

王教授によりますと、アメリカでは経済事件の捜査の最終的な目的は「市場の秩序の回復」で、罰金や追徴金などによる制裁によって効果が得られれば、逮捕にまで踏み切るケースは少ないということです。

このため「任意捜査を行わずジェット機を降りたとたんに逮捕するという、今回の日本の捜査手法は海外では「奇襲」のように感じられアンフェアだと受け止められている」と指摘しています。

一方、日本の捜査については「日本の検察や警察は、市場の秩序の回復より、いわゆる「お上」として正義を守るために不正と闘うという意識が強いのではないか」としたうえで、「特捜部はゴーン前会長が日産で多くの人をリストラしたのに、自分だけが何十億円もの報酬をひそかにポケットに入れていたことを『正義に反する』として、逮捕に踏み切ったのではないか」と分析しています。

また王教授は、特捜部がゴーン前会長を逮捕したあと、容疑の詳細をほとんど明らかにしないことも、海外メディアからの批判を集める要因になっているとしたうえで、「今回の事件は、日本人の想像を超えて国際社会から注目されている。検察は、日本と欧米では捜査に対する考え方に違いがあることを認識したうえで、批判に対しては『説明責任を果たす』という発想で臨むべきだ」と指摘しています。
文書にみずからサインか ゴーン前会長 再逮捕へ、2018年12月7日 18時03分

なぜゴーン容疑者の直接的容疑である、金融商品取引法違反と特別背任についてではなく、日本の司法制度が問題となるのか、これが問題であるのであります。

それは、簡単に申しあげますならば、世間が(主に外国を含めたメディアが)ゴーン容疑者の容疑を隠蔽し、議論の俎上にのせたくないからに他ならないからであります。

ここでゴーン容疑者の直接的容疑である、金融商品取引法違反と特別背任について議論するつもりは毛頭ないのでありますが、海外メディアを含めたメディアが気にしていますのは、日産本体との司法取引の事実なのであります。

メディアの報道の論調は別にするといたしまして、司法取引によって検察側が得た、容疑を裏付ける証拠には、絶対的なものがあると、メディアは考えているのであります。

つまり、裁判になりますれば、ゴーン容疑者有罪の可能性が極めて高いと、メディアが考えている証左ではないかと、KAIは思うのであります。

と言うことで、冒頭の本題に戻りますならば、ルノーによる日産の経営統合阻止についてでありますが、果たして今後の行方はいかなることになるのでありましょうか。

通常で考えますれば、資本の論理によって、日産がこれを阻止できる可能性はきわめて低いと言わざるを得ないのであります。

ただ、可能性が考えられますのは、ゴーン容疑者の有罪が確定した場合についてなのであります。

ゴーン容疑者が中心となって進めてきました数々の経営統合へのステップの見直しは当然といたしまして、日産とルノーの資本関係そのものの修正は否定できなくなるのは必定なのであります。

なぜかと申しあげますならば、ゴーン容疑者の金融商品取引法違反と特別背任がなぜ起きたか、それはルノーの日産支配によるゴーン専横がもたらした結果であることは明らかであるからであります。

そして、もうひとつ、ルノーによる経営統合阻止には重要なキーポイントとなる問題が存在するのであります。

それがなにかと申しあげますならば、それはゴーン改革後も続く日産の旧態依然としたガバナンス不在の経営体制そのものにあるのであります。

ゴーン専横をチェックできなかったことはもちろん、検査不正問題を始めとした数々の不祥事、これらの根本原因の根幹である経営体制の根本改革抜きでは、決してルノーによる経営統合阻止は不可能であると、KAIは考えるのであります。

はてさて、来年はいかなる展開となりますやら。

みなさま、よいお年をお迎えください。 KAI