10年前の2015年にこのブログで、大栗博司氏達のノーベル賞級の研究を紹介したのでありますが、それがこちらのエントリーであります。
知の爆発−−直感を疎かにしてはいけない(8)、投稿日:2015年5月28日
今回は、大栗博司氏自身によるこの研究の分かりやすい解説を見つけましたので、少々長くなるのでありますが、そのご紹介であります。
私たちの世界には、現在、「電磁気力」「強い力」「弱い力」そして「重力」の4つの力が存在しています。しかし、これらの力は宇宙がはじまった当初は一つの力としてすべて統一されていたと考えられており、力の統一について物理学の実験や理論の側面からさまざまな研究がなされてきました。重力を含む4つの力を統一して説明する理論の理解は、宇宙のはじまりを探求する Kavli IPMU の重要な課題でもあります。現在のところ、ミクロの世界を記述する量子力学を基礎とした理論を用いて、「電磁気力」「強い力」「弱い力」の3つの力を説明できることが分かっています。一方、天体の動きや宇宙の進化などマクロな世界での現象はアインシュタインの唱えた一般相対性理論で上手く説明できます。この時、重力は3次元の空間と1次元の時間とをまとめた4次元の時空の性質に帰すことで説明されます。しかしながら、ミクロな世界の現象は量子力学で説明されており、重力も含めて一つの理論で統一的に説明するためには重力もまた量子化される必要があるとされてきました。
そうした、一般相対性理論と量子力学を統一する理論を構築する上でホログラフィー原理 が重要であることが分かっています。ホログラフィー原理ではミクロな世界での重力を、重力を含まない量子力学の問題として説明することができます (図1) 。それにより、重力現象、さらにはその基礎となる時空自身さえも、重力を含まない理論から量子効果 (注1) によって生まれるとされます。しかし、量子効果から時空が生じる仕組みはよく理解されていませんでした。
Kavli IPMU の大栗博司主任研究員、カリフォルニア工科大学数学者のマチルダ・マルコリ教授と大学院生らの物理学者と数学者からなる研究グループは、量子効果から時空が生じる仕組みの鍵は量子もつれ (注2) であることを見出しました。特に、エネルギー密度のような時空の中の局所データが、量子もつれを用いて計算できることを示しました (図2) 。
【図2】量子もつれと一般相対性理論の間の対応関係: 赤い点は一般相対性理論の時空における局所データを表す。本研究では青い半球で表される量子もつれによってこれを計算する方程式を導いた。 (credit: Jennifer Lin et al.)
量子もつれとは、異なる場所にある粒子のスピンなどの量子状態が独立に記述できないという現象で、アインシュタインは「奇怪な遠隔作用」と呼びました。本成果はこの量子もつれという現象こそが重力現象の基礎となる時空を生成するということを示したものです。大栗博司主任研究員は「量子もつれは、ブラックホールの情報問題 (注3) や防火壁問題 (注4) など、一般相対性理論と量子力学の統一に関する深い問題と関わっていることが知られていました。今回の論文は、この量子もつれの現象と時空間の微視的構造との関係を、具体的な計算で明らかにしたものです。量子重力 (注5) の研究と、情報科学との連携は、今後ますます重要になると考えられ、私自身、引き続き量子情報 (注6) の研究者との共同研究を進めています。」と話します。
一般相対性理論から導き出される重力現象の基礎となる時空がさらに根本的な理論の「量子もつれ」から生まれる仕組みを解明した本成果が、一般相対性理論と量子力学とを統一する理論の構築に向けた研究の前進に大きく寄与すると期待されます。
(量子もつれが時空を形成する仕組みを解明~重力を含む究極の統一理論への新しい視点~)
さて、この説明のポイントは図2なのでありますが、図自体は引用元を参照していただきたいのであります。
私たちは3次元空間の中にいるため、直感的にこの図を理解することは非常に難しいことと思われるのであります。
そこでKAIなりに、これを直感的に理解する方法を考えたいと思うのであります。
それは、私たちの宇宙は、その背景に量子もつれと言う宇宙が幾重にも拡がっていて、この量子もつれと言う宇宙が、私たちの宇宙自体を生み出していると言うことなのであります。
なんとも壮大なお話ではありますが、前回のエントリーでも触れましたように、私たちの宇宙とは、その始まりから今に至るまで、とてつもない仕組みで成り立っていることが、今解明されつつあると言うことなのであります。 KAI
コメント