さて(暇なので)米国大統領選の予想でもしますか

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さて目前に迫った米国大統領選なのであります。

4年前、トランプ勝利を予想したエントリーが、こちらであります。

さて(暇なので)米国大統領選の予想でもしますか、投稿日:2016年10月27日

今回もまた、トランプの勝利を確信するのでありますが、そのわけをご説明する前に、たたき台としてこの記事をご覧いただきたいのであります。

トランプ大統領が再選を果たすのか、それともバイデン前副大統領が政権を奪還するのか、選挙まで3週間を切る中、前回4年前の選挙でクリントン氏優勢の大方の見方に対し、トランプ大統領の逆転勝利を的中させた専門家の間でも予測が分かれています。

バイデン氏の勝利を予測

バイデン氏の勝利と予測するのは、アメリカン大学の歴史学者アラン・リクトマン教授です。

教授は1984年以降、9回の大統領選挙のうち8回で選挙結果を正しく予測したことで知られ、前回もトランプ氏が勝利すると主張していました。

リクトマン氏は、世論調査の結果を分析するのではなく、過去の大統領選挙の歴史から選挙の勝敗を左右する13の指標を独自に導きだし、その指標にどれだけ合致しているかで結果を予測しています。

具体的には、経済の状況や政権の実績、評価、社会不安の有無や所属政党の状況などで、リクトマン氏はインタビューでこれらをファンダメンタルズ=基礎的条件と呼んだうえで、「アメリカ人は政権与党の政治について『ファンダメンタルズ』を冷静に分析し、次の4年間、政権を預けてもいいかどうか判断をしている」と述べて、有権者はこれらの指標を判断の材料として投票行動を決めていると指摘しました。

そのうえで「トランプ大統領は13の指標のうち7つの項目で合致しない。最終的な予測では1992年にブッシュ大統領がクリントン氏に敗れたとき以来の再選を果たせなかった現職大統領になるだろう」と述べ、トランプ大統領は再選できずバイデン氏が勝利すると予測しています。

リクトマン氏の指標による分析では、去年末の時点ではトランプ大統領の勝利を予測していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大と経済の悪化、人種差別に抗議するデモの拡大で予測が変わったとしていて「トランプ大統領は、短期的な経済状況、長期的な経済状況、そして社会不安の3項目で不利な状況になり、アメリカの歴史上、現職大統領としてわずか数か月の間に勝利予測が敗北予測に転じた初めてのケースになる」と話しています。

一方、トランプ大統領の感染や最高裁判所判事選びなど最近の情勢がどれだけ選挙に影響を与えるかについては「感覚的には受け入れられないかもしれないが、大統領選挙には全く影響しないと言っていい。例えば前回の選挙で私がトランプ氏の勝利を予想したのは、トランプ大統領が女性を見下すような発言を繰り返していた音声が暴露される前だった。また当時のFBIのコミー長官がクリントン氏の電子メールへの捜査を始めることを発表する前でもあったが、予測には何の影響も与えていない」と話しています。

トランプ大統領の再選を予測

これに対し、トランプ大統領の再選と予測するのはストーニーブルック大学のヘルムット・ノーポス教授です。

ノーポス氏は、株価や経済状況の予測にも用いられる統計手法を用いて大統領選挙の結果を予測し、過去6回の大統領選挙のうち、前回のトランプ氏を含む5回の選挙の勝者を的中させています。

ノーポス氏は今回、91%の確率でトランプ大統領が再選されるとしています。

ノーポス氏は「選挙の結果を予想している研究者のほとんどがバイデン氏の勝利を予測しているなかで私は異端だが、4年前も同じ思いを経験している」と話しています。

またノーポス氏は、各種世論調査がバイデン氏のリードを示していることについて「今、激戦州とされている州ではバイデン氏が数字上リードをしているが、2016年の時もクリントン氏が数字上、同じようにリードし、結果的にトランプ氏が勝利した」と指摘しています。

そのうえで「この20年間、世論調査による支持率は民主党に強く出過ぎる傾向があり、間違えてきた。そしてトランプ大統領は特に好き嫌いが顕著に分かれる政治家なので、トランプ大統領を快く思っていない人たちの中では、トランプ氏を支持しているとは言い出せない」と述べ、世論調査には表れない「隠れトランプ支持者」の存在に言及しました。

さらに「人は今がもっとも歴史上、特異な時だと考える傾向がある。しかし4年前の選挙では、ロシアが選挙干渉をしているという話もあったし、クリントン氏の電子メールのスキャンダルもあった。2008年には多くの人が黒人はアメリカの大統領にはなれないと考えていた」と話し、現在の情勢は歴史的に見ても予測を覆すほど特別な状況にはなく、おおむね予測通りに推移するだろうという見方を示しました。
前回的中の専門家に聞いた アメリカ大統領選の勝者予測は?、2020年10月17日 8時07分

トランプ再選を予測するノーポス氏が指摘する「世論調査による支持率は民主党に強く出過ぎる傾向」、これこそが、今回の選挙でも、前回の選挙でも、選挙結果を左右する、きわめて大きな要因となっていると、KAIは考えているのであります。

この「世論調査による支持率は民主党に強く出過ぎる傾向」について、様々な分析が行われているのでありますが、ここに恰好のレポートがありますので、ご紹介するのであります。(例により、NHKは記事が消えてしまいますので、全文引用、ご容赦)

投票まで2週間余りとなったアメリカ大統領選挙。
トランプ大統領が新型コロナウイルスに感染するなど終盤も波乱の展開が続いている。

世論調査ではトランプ大統領は野党・民主党のバイデン前副大統領にリードされている。
ただ、4年前の大統領選挙では民主党のクリントン氏が各種世論調査で終始リードしていたにもかかわらず、実際に勝ったのはトランプ氏だった。

今回は世論調査を信頼できるのだろうか。
「大失敗」をした世論調査の当事者たちが語ったこととは?

(中略)

前回の大統領選挙では、主要メディアは世論調査で終始リードしていたクリントン氏が勝利する確率が高いと予測していた。
中にはクリントン氏勝利の確率は99%としていたところもあった。
それだけに、ただでさえ型破りなトランプ氏の勝利は世界を驚かせた。

今回の選挙戦では、民主党のバイデン氏が一貫してトランプ大統領をリードしている。注目されていたテレビ討論会やトランプ大統領の新型コロナウイルス感染を経てその差はさらに開き、10月15日時点で9.4ポイントとなっている。

今回は世論調査を信頼できるのか、取材を始めた。

「大失敗」の当事者は何を語るのか?

アメリカ世論調査協会がいわば「失敗報告書」を発表していると聞き、まずはその執筆者にあたってみることにした。
2017年に発表された報告書は、50ページ以上にわたる詳細なものだ。

執筆者の1人、ウィスコンシン州のマルケット大学のチャールズ・フランクリン教授が取材に応じてくれた。
フランクリン教授は、自身も世論調査を行っている。

失敗の理由は何か。
単刀直入な私の最初の質問には、意外な答えが返ってきた。

フランクリン教授

「少なくとも全国レベルの世論調査は極めて正確でした。誤っていたのは州レベル、特に勝敗を決した激戦州の世論調査だったのです」
アメリカの世論調査は全米を対象にしたものと、州レベルで行われるものとがある。

確かに全米の選挙直前の世論調査はクリントン氏が3ポイントリード、これに対し開票結果は有権者の総得票数でクリントン氏が2ポイントリードで、その差わずか1ポイント。かなり正確に情勢を反映していたと言える。

しかし、アメリカの大統領選挙は、総得票数で決まるのではなく、各州と首都ワシントンに割りふられた選挙人の獲得数で勝敗が決まる。
ほとんどの州が「勝者総取り」方式で、1票でも多く獲得した候補者がその州の選挙人を総取りすることから、総得票数で上回っても、獲得した選挙人の数では下回り、敗北することもある。

多くの州では伝統的に共和党と民主党のどちらが強いかという傾向がはっきりしているため、最終的には一部の激戦州の結果が当落を左右する。
そうした州の1つ、ウィスコンシン州で行われた投票日直前の世論調査では、クリントン氏が6ポイントリードしていた。

しかし結果はトランプ氏が勝利。大きな誤差があったのだ。

見落としていた「教育レベル」

州レベルでの世論調査で誤差が大きかった理由についてフランクリン教授は、「教育レベル」の見落としがあったと指摘した。

世論調査では一般的に大卒以上の高学歴の人が調査に協力しやすく、高卒の人たちのデータを捕捉しにくい傾向があるとされる。
前回選挙では高卒以下の学歴の人のかなりの割合がトランプ氏に投票したことが分かっているが、世論調査の段階ではこの傾向を見抜けなかった。
このため、データを補正せず、結果的に回答者の中で大きな割合を占める大卒の人たちの声がより反映され、クリントン氏が実態よりも強いという数字が出てしまったという。
ちなみにこうした問題は、その後の世論調査では改善されているとのこと。

「隠れトランプ支持者」いる?いない?

世論調査の失敗の謎を解くため、次に調べたのが「隠れトランプ支持者」の存在だ。

「隠れトランプ支持者」とはトランプ大統領を支持しながらも、世論調査などではそれを明らかにしない人たちのことだ。トランプ支持者が実態より少ないように見え、世論調査に誤差が出た理由の一つとなったのではないかと指摘されることもある。

この「隠れトランプ支持者」について話を聞いたのが、世論調査機関、トラファルガーグループのロバート・ケイヒリー主任調査員だ。

この団体に話を聞いたのは、早くから「隠れトランプ支持者」の存在を指摘し、前回の選挙でほとんどの世論調査会社がクリントン氏優位とする中、トランプ氏のほうが優勢だと指摘していたからだ。

「社会的望ましさのバイアス」とは?

ケイヒリー主任調査員は、「隠れトランプ支持者」の存在には、ある傾向が影響していると指摘する。

これは回答者が質問に対してみずからの本音とは異なっていても社会的に受け入れられやすい回答をしてしまうという傾向で、「社会的望ましさのバイアス」と呼ばれている。

前回選挙の場合、トランプ氏の発言やふるまいへの批判の高まりから、批判に同調したほうが社会的に受け入れられやすいと判断したり、トランプ氏を支持していると言い出しにくかったりする傾向があり、これが「隠れトランプ支持者」につながったというのだ。

この団体では前回の選挙で質問に工夫を加えることで「隠れトランプ支持者」を把握しようとした。

「トランプ氏を支持するか」という質問に続けて、「あなたの近所に住む人の多くはトランプ氏を支持しているか」という質問を設けたのだ。
その結果、クリントン氏について同様の質問をした場合に比べ、後者の質問に対して「はい」と答える割合が高かったため、「隠れトランプ支持者」が存在すると判断したとしている。

気になる今回はどうなのか。

ケイヒリー主任調査員は、トランプ大統領の就任以降、社会の分断がさらに深まったことで、トランプ支持と言いにくい環境がより強まっているとしている。

ケイヒリー主任調査員
「隠れトランプ支持者はさらに増えるだろう。人々は自分の意見を口にすることに神経質になっているからだ」

「隠れトランプ支持者」?態度未定の有権者?

ただ、話はそう簡単ではない。
「隠れトランプ支持者」が世論調査に与える影響は限定的だとの指摘もあるからだ。
冒頭の「失敗報告書」では「隠れトランプ支持者」が調査結果を大きくゆがめた根拠は見つけられなかったとしている。

代わりに報告書が指摘するのが、態度未定だった有権者の存在だ。

4年前の選挙では投票日の直前まで誰に投票するか決めていなかった人の割合が13%にのぼっていた。これは、前々回の2012年の選挙よりおよそ8ポイント高い数字だ。
こうした人たちの投票行動を出口調査の結果から分析したところ、勝敗を左右したペンシルベニア州やウィスコンシン州などの激戦州では、その多くがトランプ氏に投票したことが分かった。
つまり、最後に世論調査が行われた時点では態度未定だったため、トランプ氏が実態より弱く出てしまったというのだ。

同じことが起きるのか?

今回も同様のことが起きるのか。

「失敗報告書」の執筆者でもあるピュー・リサーチ・センターのコートニー・ケネディ主任調査員はその可能性は低いと言う。

ケネディ主任調査員
「4年前との最大の違いは、今回はトランプ大統領が現職だということです。トランプ氏、クリントン氏がどのような大統領になるか分からなかった前回とは異なり、今回はトランプ大統領がどのような政策をとるか有権者は理解しているので、直前まで決められない有権者は少ないのではないか」

いちばん聞きたかった質問

取材の終わりに、「失敗報告書」の著者の1人、フランクリン教授にどうしても聞きたかった質問をぶつけてみた。

「トランプ氏が勝利した瞬間はどのような気持ちでしたか?」

フランクリン教授は選挙当日は、3大ネットワークであるABCテレビのニューヨークのスタジオで当確判定にも関わっていた。トランプ氏の勝利は、世論調査の当事者としてひときわ驚きだったと思ったからだ。

私の質問にじょう舌だった話しぶりはなりを潜め、小さな声で答えが返ってきた。

フランクリン教授
「心が沈み込む気持ちだったのは否定しようがないですね」

そして、今回こそは信頼してもいいのか、と尋ねると、今度は元気のいい答えが。

フランクリン教授

「世論調査とはそもそも選挙の勝者を占うものではありません。調査の時点で人々がどのように考えているかを伝えるもので、あくまで選挙結果を決めるのは有権者の一票なのです」
“トランプ劣勢”? 世論調査は信頼できるのか、2020.10.17
このレポートによれば、今回の世論調査は、前回の世論調査の分析から大きく改善され、バイデン支持多数は信頼して良いそうなのであります。

確かに世論調査ではバイデン支持多数は、そうなんでありましょう。しかしながら、これは前回の選挙でも同じであったのではありませんか。

もちろん、今回の世論調査は改善されたことは、KAIは認めるのであります。

それでは、前回の世論調査が間違っていたのでありましょうか。つまり前回の世論調査はトランプ支持多数と出るのが正しかったのでありましょうか。

そうではないのであります。

ここからが、KAIがトランプ再選を確信する理由のご説明になるのでありますが、前回トランプ勝利を予想した、この記述がすべてを説明しているのであります。

しかし、今回の選挙は、これまでの選挙とは、まるで「モデル」が別物だったことに、彼は気付かなかったのであります。

そうです、今回の選挙のモデルとは、それは「中傷合戦」と言うモデルであったのであります。このモデルで得られる結論とは、候補が好きか嫌いかだけなのであります。

でありますから、いくら各種調査のデータを集めて、これを分析してみたところで、得られる結論は、単に好きか嫌いか、決して、投票するかしないかではなかったのであります。

多くのメディアが報じるクリントン圧勝も、これと同じ理由で当てにならないと言うのが、これまたKAIの思うところであるのであります。
さて(暇なので)米国大統領選の予想でもしますか、投稿日:2016年10月27日

すなわち、トランプの選挙では、従来からの世論調査のモデルが機能していないと言うことなのであります。

今回もまた、テレビ討論会で明らかになりましたように、「中傷合戦」モデルのまま投票は進行してきているのであります。

そしてこれが顕著となりますのが、接戦州なのであります。

接戦州の有権者にとりましては、接戦になればなるほど、現職大統領の実績や期待などは、なんら関係なくなるのであります。

つまり、新人同士クリントンと争った選挙と同じ構造、トランプが好きか嫌いかが重要となるのであります。

そして、冒頭で引用させていただきました、今回の選挙結果を左右する要因、「世論調査による支持率は民主党に強く出過ぎる傾向」とは、言い換えますれば、それは「モデル」の違いの証明であったのであります。

はてさて、いかなることになりますやら。結果は後のお楽しみ。 KAI